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KAMIOKADA IIN

小児喘息の治療     成人喘息の治療

上岡田医院
                      
小児気管支喘息


目次

I. 小児ぜん息はどのような病気でしょう

II. 小児喘息はどのくらいいるのでしょう

III. 小児ぜん息の危険因子

IV. 小児ぜん息の急性発作への対応

V. 小児ぜん息の長期管理に関する薬物療法

VI. 乳児ぜん息

VII. 小児ぜん息における吸入機器とその使い方

VIII. 小児ぜん息の心理療法

IX. 運動誘発性喘息、運動療法

X. 肺機能、ピークフローモニタリング


V.小児ぜん息の長期管理に関する薬物療法


ぜん息は、発作のないときにも気管支では炎症がおこっています。この炎症を積極的に治療して発作をおこさないようにすることがぜん息治療の目標であり治癒につながります。このことを長期管理と呼びます。
治療の目標として以下の6つをあげています。

小児ぜん息の治療の目標
  1. 軽いスポーツも含めて日常生活を普通に行う
  2. 昼夜を通じて症状がない
  3. ベータ2気管支拡張剤の頓用が減少または必要がない
  4. 学校を欠席しない
  5. 肺機能がほぼ正常
  6. ピークフローが安定

この目標を達成するために長期管理という考え方があるのですが、その内容は、薬によるものだけではありません。とかく薬の治療に偏ってしまうことが多いようですが、基本は、
  1. 適切な環境整備
  2. 適切な薬の使用
  3. 本人、家族、幼稚園・学校の先生が小児ぜん息について正しく理解するために勉強することです。


1. 長期管理薬


長期管理のために使用される薬を長期管理薬(コントローラー)と呼びます。長期管理薬の特徴は、抗炎症作用をもっていることです。抗炎症作用とは気管支でアレルギー反応に関係する細胞、化学伝達物質の作用を弱めたり、減らしたりする作用を言います。

1) クロモグリク酸ナトリウム(インタール)
肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑えます。運動の前に吸入することで運動誘発性喘息を抑えてくれます。インタール吸入液にベータ2気管支拡張剤を混ぜて吸入する方法も効果があります。
カプセルの粉末、ガスの粉末、液体があります。経口インタールは、ぜん息には効果がありません。

2) 経口抗アレルギー薬
小児ぜん息に使用されている抗アレルギー薬は、下表のとおりです。主に間欠型、軽症持続型、中等症持続型のぜん息に使用されます。一般的に2か月間ぐらい使用して効果を判定します。

分類

薬品名

商品名

化学伝達物質遊離抑制薬

トラニラスト

ペミロラストナトリウム

レピリナスト



、アレギザール

 

即時型アレルギー反応における肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制します。

ヒスタミンH1拮抗薬

フマル酸ケトチフェン

塩酸アゼラスチン

オキサトミド

メキタジン

ザジデン



セルテクト

ニポラジン

 

咳型ぜん息や咳嗽の強い者に有効。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などを合併する場合に合併症にも効果があります。

ロイコトリエン受容体拮抗薬

プランルカスト

モンテルカスト

オノン

シングレア、キプレス

 

ロイコトリエンという化学伝達物質のうちの一部が気管支収縮、気道炎症に強く作用しています。このロイコトリエンが作用する場所(受容体)を抑える(拮抗する)作用があるのがこの薬です。これまでの抗アレルギー薬より優れた作用があります。

Th2サイトカイン阻害薬

トシル酸スプラタスト

 

サイトカインを抑える作用があります


3) 吸入ステロイド
吸入ステロイド薬は、気道の炎症を強力に抑え、症状の改善、肺機能の改善、気道の過敏性が改善します。これによって、ぜん息発作が減り、入院や喘息死が減少しています。
ぜん息を発症し早期に使用することでリモデリングを予防できます。

薬品名

商品名

剤型

プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)

オルべスコ

アルデシン

キュバール

定量噴霧式(ノンフロンガス)

定量噴霧式(フロンガス)

定量噴霧式(ノンフロンガス)

プロピオン酸フルチカゾン

フルタイド

ドライパウダー

定量噴霧式(ノンフロンガス)

ブデソニド

パルミコート

ドライパウダー

年齢や重症度、吸入方法で薬剤の選択、投与量を決めています。投与量の決定は、はじめ少量から開始するステップアップ方式と十分量から開始して症状の改善とともに減量するステップダウン方式があります。
副作用は、これまでの検討でベクロメサゾンで1日量400μg以下なら概ね問題がないと考えられていますが、個人差があるので十分注意が必要です。

4) テオフィリン徐放製剤
内服後ゆっくり薬が出てくるように工夫されていますので内服してから効果がでるまで時間がかかります。気管支拡張効果や抗炎症効果があります。
テオフィリンの体の中での分解は、個人差があります。血中濃度があがると副作用が出やすいので乳児、感染症時、脱水時、発熱時、併用薬剤があるときは注意が必要です。

5) ベータ2刺激薬
ベータ2気管支拡張剤(刺激薬)は、発作の時に使用する気管支拡張剤です。これらの薬を長期に使用しなくてはならない状態の時は、他の治療方法でステップアップを考えるべきです。

2. 長期管理薬の使い方


長期管理薬の使用は、重症度の評価をおこない、治療ステップを決めています。そのステップと年齢によって治療法を決めています。年齢別の治療ステップの表があります。



                                                                       
                                   
アレルゲンの除去方法


気管支喘息は遺伝的因子(アトピー素因、気道過敏性など)と環境因子が絡み合って、気道の炎症と過敏性の亢進が生じて発病すると考えられます。環境因子には、アレルゲンとなる特異的環境因子とさまざまな増悪因子(非特異的環境因子:大気汚染物質や喫煙、薬物、ウイルスの呼吸器感染など)に分けられます。この環境因子を除去することが喘息の発病予防にとても大切です。アレルゲンは、室内と室外アレルゲンに分かれ、室内では家塵ダニ、カビ、ペット、職業アレルゲン、室外では花粉、昆虫アレルゲンが主要アレルゲンですが、喘息の予防は室内の環境対策が重要です。なかでもダニの除去は喘息の発病予防(一次予防)のみならず喘息症状を改善(二次予防)し、慢性化と重症化を防ぎます。生きているダニよりもダニの糞や死骸が細かくなった家塵のほうが喘息に悪いので殺ダニ剤を使うよりも紙パック集塵袋式の電気掃除機を念入りに使う方に効果があります。1週間に1回は寝具類を1m2あたり20秒間かけ吸塵することにより1m2あたり1000匹以下に減らすことが出来ます。(これ以下の数は喘息の発症を減らします)

(1)
建築構造の対策:換気をよくする。湿度を抑える。床下の通気を良くする。
(2)
室内環境の対策:換気をよくする。家塵のたまる家具を減らす。湿度を下げる。加湿器や石油ストーブは使わない。じゅうたん類は置かない。
(3)
ダニ、カビ対策:湿度を50%以下にする。除湿機を設置する。週1回は掃除がけする。ふとんは週1回、天日に干し、掃除機をかける。
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